holly's日記

滋賀県大津市在住 40代ライダー兼ランナーです。

美ケ原トレイルラン2022

美ケ原トレイルラン

 

2022.7.2

 

距離 85㎞

累積標高 4,200m

順位 9位/350人

時間 12時間32分

天気 快晴→曇り→雷雨

 

学生時代に日本アルプスや北海道の山々を登り、人生で必ずいつかは行きたいと思っていた美ケ原。

そこでトレイルランが開催されると知り、楽しみで仕方なかった。

HPや動画では一本に延びる稜線の登山道が美しい。

距離は85㎞と今までの比叡山トレイランの50㎞が最長で新しい挑戦。

 

【前日】

仕事の終わった午前9時に職場からそのまま車で移動。

距離は420㎞で所要時間は約5時間。

単独で運転はなかなかきつく、仕事の疲れもあり、要所要所SAで休憩をとり、14時50分にスタート地点のブランシュたかやまスキーリゾートに到着。

前日受付の開始10分前で無事に受付、ココヘリの受け取りを完了。

ココヘリとはもしも動けなくなった場合にGPSからヘリの要請を出来るといったもので1日レンタルを申請しておいた。

これは85㎞の出走者は必須装備だった。

ここから本日の宿の松本まで1時間ちょい。

17時前には宿に宿泊。

宿泊といっても翌日レーススタートが4時なので宿の出発は深夜1時半。

20時過ぎには床についたが興奮でなかなか寝れなかった。

 

【当日】

予定通り深夜1時に起床。

シャワーを浴び、ドリンクを補給し、1時半には宿を出発。

すべて予定通り。

車内の移動時におにぎりを三個ほおばる。

会場には3時前には到着。

到着前のスキー場の坂では若干渋滞が発生し、「深夜3時にこんな場所で渋滞が起こるのは1年でも今日ぐらいだろう」とちょっと笑った。

3時半には準備完了。

開会式が始まる。

どの方も「熱中症」の危険と対応を話される。

予定ではこの日気温は35度近くになり、この時期はない暑さとのこと。

特に50㎞から始まる10㎞の林道は「死のロード」だと開催者が話される。

実際、長く延々と続く林道はその通りだった。

 

カウントダウンが始まる。

前列からゲートをくぐり、いよいよ85㎞の長い旅が始まる。

最初の3㎞はスキー場を上がっていく。

斜度はきつく、たまに歩くがシングルトラックが始まって渋滞になるのが嫌で15番手ぐらいを位置する。

3㎞だが獲得は一気に500m登る。

ヘッドライトの灯りを頼りに走り、途中後ろを振り返ると蛍の光のようで美しかった。

登りきると今度はまた一気に下る。

徐々に明るくなり、気温も20度ほどで涼しく最高に気持ちよかった。

 

今度は殿城山の登り。

約300m上がる。足の合う人と登る。

まだまだ序盤でどこから来たのかとか何回目の出走なのかといった具合に話がすすむ。

殿城山を登ると一気に視界が広がる。

壮大な大地が広がり、360度の大パノラマ。

 

これこれ!

これを感じに来たんだと感無量の最高の気分になる。

 

気温は徐々に高くなってくる。それとともにドリンクの消費も激しくなる。

1STエイドの和田峠は23㎞地点。

5人パックの少数団で向かう。

何度かアップダウンを繰り返し、和田峠AIDへ。

しっかり水分を補給し、ここから三峰山の登りへ。

3㎞で400mほど登る。

時刻は7時半で気温はすでに30度近くある。

下ると車道に出て、しばらくはアスファルト道を走る。

28㎞地点の扉峠ウォーターステーションへ。

文字通り水分のみの補給が可能。

 

ここから一気に500mほど高度を稼ぐ。

とても走れるような斜度ではない。

しかし、ここを登ると茶臼山を始め、美ケ原の核心部に入る。

展望最高なのは知っており、展望を楽しみに登り続ける。

8時30分 茶臼山に到着。

開始から4時間半で距離は30㎞ちょい。

 

ここからがやはり素晴らしかった。

熊笹の中に一本延びる稜線の登山道。

周りはアルプスの大展望。

下を見て走るのはもったいないと浮石にだけ注意して景色を堪能して走る。

おまけにほぼフラットの登山道で走りきれる。

美ケ原最高峰の王ケ頭を越えると美ケ原の看板。

本当に景色が良く、言葉が出ない。

コース横には牛たちの姿が。

いつか必ず家族で来たい場所だな思った。

ドライブウェイがあり、車でも容易に来れるらしい。

 

38㎞地点。

2回目のエイド、山本小屋エイドへ。

すごく腹が減っており、ピーナッツパンを4個ほど食べる。

しっかり食べて置かないとガス欠になるのは分かっている。

今回補給食はジェルが中心で固形物はほぼ持ってきていなかった。

さらにバナナを頬張り、エイドを出発。

 

40㎞地点は一転して下り。

10㎞で約1,000m下る。

かなり斜度がきつい場所があり、落石と転倒に注意しながら進む。

 

林道に入り、気温もかなり上がってきた。

身体を冷やそうと林道横の沢でアイシングをする。

脚をしっかり冷やそうと靴を脱ぎ、しっかり冷やす。

 

これが効いた。

頭もそのまま沢につけると水の冷たさもありシャキッとする。

痙攣しそうだった脚も一気に回復した。

残り3㎞ほどだった林道も難なく下り、50㎞地点の第3エイドの和田宿へ。

 

ミドルの50㎞のレースはここがゴールになるらしく、ゲートも準備してあった。

ここでもバナナを中心にしっかり補給をして後半戦へ。

 

少しパンチの効いた水沢峠を越えるといよいよ死のロードと言われた10㎞続く林道が始まる。

高度も700mほど登る。

 

当初アイシングの効果で5~6㎞ほど走るが、展望は全くなく、ただただ林道の登りが続くだけで、またそれが長い。

残り4㎞ほど残し歩きだす。斜度は緩く、走れない斜度では分かっているが、走っても200mほどで歩きたくなる。

 

いったいいつまで続くのかとこの林道には本当にメンタルがやられた。

落ちているちょうどいい長さの枝をストック代わりにして少しでも脚の負担を軽減する。使えるものは現地調達し、何でも使う。

沢を見つけると脚や頭を冷やし、疲労と意識の回復につなげる。

登りきる直前にボランティアスタッフの方が一名励ましてくれ、ここで林道は終わりだと伝えてくれる。

本当にありがたかった。

ここでこの方に初めて前には何名のランナーがいるのか尋ねると、9番目か10番目だと伝えてもらえた。

 

少しビックリした。

熱中症にならないように細心の注意をして、沢ではアイシングを続け、エイドでも他のランナーより多く休憩し、まさか自分がトップ10にいるとは思っていなかった。

 

ここで意識が大きく変わる。

完走を求めたレースからリザルトを求めたレースに変わる。

残りは25㎞。

死のロードも終わり、ここからは気持ちのみで走りきれる。

前を追う。

 

65㎞地点。

長門牧場のエイド。

食欲があり、出してもらえたものはすべて美味しかった。

ファンタグレープのフルーツポンチ、素麵を入れた冷製みそ汁、飲むヨーグルト

 

今までだったらもっと長い時間エイドにいた場所だったが、前を追いたい気持ちから補給をしてすぐに出発した。

 

ここらからフィジカルではなく、得意のメンタル。

アップダウンはあるものの走れる斜度の登山道。

一つでも前の順位へ。

 

ただそううまくいかないのがレース。

一番警戒していたコースのロストを70㎞地点でしてしまう。

コースにはリードテープが張られたり、垂れ下がっているが、沢を横断するべきところをしばらく沢を下ってしまった。

時間にして約5分ほどで正規ルートに戻ったが、この地点でのコースロストは体力的にはもちろんだが、メンタル的に大きく影響した。

せっかく前を追おうと走れる区間はすべて走り、ちょっとづつでも前に近づいていると思っていたが、台無しの気がした。

後続も気になった。ギリギリトップ10にいるのに抜かれてしまうとその位置も失ってしまう。

 

74㎞地点の最終エイドの大門峠手前の直登もロープを手にして必死に登り、最終エイドへ。

 

9番目だと伝えてもらう。

残りは11㎞。

 

水のみを補給してすぐに行こうとしたが、男性のスタッフの方から思いがけない言葉を投げかけられる。

 

 

 

「最後までもう少し、最後まで楽しんで!!」

 

 

 

ハッとした。

 

 

 

「楽しんで・・・??」

 

 

 

 

そうだったいつの間にかレース自体を楽しんでなかった自分がいた。

11時間近く走り続け、人生最長のランで苦しい、痛いが先にきて、当初スタートゲートをくぐった時に「楽しむぞー」と思った初心を忘れていた。

 

 

男性スタッフの方に

「そうですよね、最後まで楽しませてもらいます。」と伝え、最終エイドを後にした。

 

雷が鳴り、雨が降ってきた。

 

それでもこの瞬間を大事に最後まで楽しもうと思った。

気持ちが楽になった。

 

最後の登り、大笹峰。

スタートした時と逆で反対側にあるエコーバレースキー場を登り、頂上からは下りゴールになる。

雨が強くなるなか、単独で山頂を目指す。

 

よくもまぁ42歳になって初めて12時間も走るようになったなぁと初めて出会える自分に感動し、大笹峰のレース最後の山頂へ。

 

ここからは朝4時に登ったルートを下る。

あの時はヘッドライトの灯りが頼りだったので、こんな景色だったのかと12時間を過ぎてようやく知る。

 

ゴールゲートが近づく。

アナウンスが聞こえる。

12時間32分、長い旅だった。

人生最長ランだった。

笑顔でゲートをくぐる。

 

すぐに家族に電話をし、無事に怪我なく終えたことを伝える。

今回は単独での行程で妻には子供たちの世話をまかせて出発した。

なかなか出来るものではない。

本当にありがたい環境だな思う。

 

今回も長い旅で自分の向き合えて、まだ知ることのなかった自分に出会えた。

どれだけ歳をとろうともこういった感情が生まれるのは素敵なことだなと思う。

そして、こういった感情浸れる今の環境に本当に感謝したい。